Dead man poster

私はJim Jarmush (ジム・ジャームッシュ)が最も好きな映画監督です。本ブログでは全ての作品を紹介したいと思っていますが、まずはその中でも一番好きで、ジムの映画にのめり込むきっかけとなったDeadman (デッドマン)について整理したいと思います。

デッドマンとは

1995年に公開されたジム・ジャームッシュ脚本、監督の映画です。主演はJohnny Depp (ジョニー デップ)、撮影はRobby Muller (ロビー ミュラー)、音楽はNiel Young (ニール ヤング)が担当しています。ジム・ジャームッシュの作品の中で最も制作費の高い映画といわれており、9百万ドル要したと言われています。全てモノクロで撮影、従来の西部劇とは一線を画す作品となっておりPychedelic western, Acid westernと呼ばれています。

詩人ウィリアムブレイクをオマージュした作品であり、主人公の名前もウィリアムブレイク、ブレイクの詩が映画の中にも度々引用されます。各シーンが美しく幻想的、セリフも詩的で、ウィリアムブレイクの版画絵に詩を入れた作品を映画版にしたような印象を個人的には持っています。映画のストーリー自体は非常にシンプルですが、ジムもインタビューの中で認める通り、暴力、アメリカの歴史、スピリチュアル、ウィリアムブレイク 、詩、名声、ネイティブアメリカン、差別、偏見等様々なサブテーマが散りばめられており、それを自分なりに発見するのもこの映画の別の楽しみ方かと思います。

評価は批判的、肯定的な反応が極端に分かれているようですが、映画評論家の中では概して否定的な意見が多いようです。結果として興業収入が百万ドル程度ということなので、興行的には成功できていないようですが、ファンの間ではカルト的な人気を得ています。

Dead Man Official Trailer

あらすじ

日本語のウェキペディアがネタバレし過ぎない程度にシンプルにまとまっているので引用します。

ビル・ブレイクという名前の青年が、会計士の仕事を求め、マシーンという名前の街にやってくるが、仕事を得ることはできなかった。その夜、セルという若い娘に出会い、痴情騒ぎに巻き込まれ、男が発砲。セルが自らの身を投げ出しブレイクをかばったため一命を取り留める。しかし、濡れ衣の罪を着せられたブレイクも、弾丸を撃ち込まれた体のまま、報奨金目当ての殺し屋たちに追跡されることになってしまう。深い傷を負ったブレイクは、途中、ノーボディという名前のインディアンに命を助けられる。ブレイクの名前を聞いたノーボディは、自分が助けた人物が、イギリスの詩人ウィリアム・ブレイクそのひとであると考え、深い敬意を払う。こうして、ブレイクとノーボディとの不思議な逃亡の旅が始まる。その過程で、腰抜けの会計士ブレイクは、巧みな銃の使い手、まさに、正真正銘の白人殺しの張本人へと変貌をとげていく。

音楽

音楽、サウンドトラックはニールヤングが担当しています。当初ニールヤングは元Nirvana (ニルバーナ)のKrist Novoselic、Dave Grohlとともに作品作りする計画だったようですが、ジムがEric Cpalton(エリッククラプトン)が音楽を担当した”The Hit”のようなサントラにはしたくないとヤングに話し、結局ヤング一人でスタジオに篭りレコーディングすることになったそうです。ヤング一人でスタジオに篭り、まだ音楽のないできたての映像を見ながら、即興で音楽を作ったそうで、結果エレクトリックギター、ギターのシンプルな構成ながら、非常に緊張感のある出来となっています。特にオープニングとエンディングのテーマ曲は、私のフェイバリットスコアの一つです。サントラが発売されていますが、なぜかこのテーマ曲は含まれていないので購入の際はご注意下さい。

Neil Young (ニールヤング) Dead man Theme

この映画でニールヤングの音楽は主役級の役割を果たしていると思います。良い意味で通常のサントラのように引き立て役には収まっておらず、音楽、映像、セリフ、詩が全て同時に同レベルで脳に焼きつくような印象です。

William Blake (ウィリアム・ブレイク)

先述の通り、本映画はウィリアムブレイク をオマージュした作品でありブレイクの詩が度々引用されます。私自身はブレイクの作品を完読したことはないのですが、様々なアーティストが引用することもあり目にする機会が多いです。ブレイク について簡単に。

ウィリアム・ブレイクは1800年頃のイギリスの詩人、画家、銅版画家でロマンティシズムを代表する詩人で、イギリスの歴史にもっとも偉大な芸術家と言われています。ドアーズ、パティスミス、アレンキンズバーグ、大江健三郎、鈴木大拙等国内外のアーティストに多大な影響を与えています。

ブレイクは白人/キリスト教徒でありながら、白人文化、正統派キリスト教の権威主義等を批判し、西欧の近代思想のタブーを指摘し続けたため、同時代の人々からはその特異な作風のため狂人と見なされ無視され、存命の間は高い評価を受けなかったようです。

ブレイクの 有名な詩『無垢の予兆』の冒頭は聞いたこといる人もいるのではないでしょうか。

一粒の砂に 一つの世界を見 一輪の野の花に 一つの天国を見 掌(てのひら)に無限を乗せ 一時(ひととき)のうちに永遠を感じる。


To see a world in a grain of sand. And a heaven in a wild flower, Hoid infinity in the palm of your hand. And eternity in an hour.

難解な詩も多いですが、この詩は非常に分かりやすいです。

虎」(The Tyger)。『無垢と経験の歌』のブレイク自身による彩飾本(1794年)
Wikipediaより引用

おわりに

かなり評価が分かれる作品です。恐らくフランス映画や古い日本映画、単館系の映画(つまり映画内に大きな起承転結がない)にある程度慣れがある方でないと恐らく寝ます(笑)。

映像、音楽の美しさ、ジョニーデップのかっこよさだけでも見る価値はあると思います。またジムがインタビューの中でも言っている通り、ストーリー自体は非常にシンプルです。ただしジム・ジャームッシュの入門としてはお勧めしません。ブロークンフラワーあたりが入ると良いかと思います。(ボブディランの音楽と同様、入り方間違えると一切好きになれないと思います(笑)

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