今回で三回目となる2005年以降のロック、音楽シーン。前回までは2014年までを振り返りました。今回は2015年以降を振り返りたいと思います。ここ数年は各誌まとまった形でランキングしておりませんので、一年単位で振り返りたいと思います。今回もアメリカを代表するローリングストーン誌とイギリスを代表するNME誌のランキングを見てみましょう。
2015年のトップ10アルバム
“50 Best Albums of 2015 – Rolling Stone”より
- Kendrick Lamar, “To Pimp a Butterfly” (ヒップホップ)
- Adele, “25”(ポップ)
- Drake, “If You’re Reading This It’s Too Late”(ヒップホップ)
- D’Angelo and the Vanguard, “Black Messiah” (R&B)
- The Weeknd, “Beauty Behind the Madness”(R&B)
- Courtney Barnett, “Sometimes I Sit and Think, and Sometimes I Just Sit”(インディーロック)
- Jasno Isbell, “Something More Than Free”(カントリー)
- Various Artists, “Hamilton: Original Broadway Soundtrack”
- The Arcs, “Yours, Dreamily”(ガレージロック)
- Blur, “The Magic Whip”(UKロック)
NME’s Albums of The Year 2015
- Grimes, “Art Angels”(シンセポップ)
- Kendrick Lamar, “To Pimp a Butterfly”(ヒップホップ)
- Jamie xx, “In Colour”(エレクトロニカ)
- Wolf Alice, “My Love Is Cool”(オルタナティブ・ロック)
- Tame Impala, “Currents”(サイケデリック・ロック)
- Chvrches, “Every Open Eye”(シンセポップ)
- Lana Del Rey, “Honeymoon”(ドリームポップ)
- Foals, “What Went Down”(インディーロック)
- The Maccabees, “Marks To Prove It”(インディーロック)
- Unknown Mortal Orchestra, “Multi-Love”(サイケデリック・ロック)
2016年のトップ10アルバム
50 Best Albums of 2016 – Rolling Stone
- Beyonce, “Lemonade” (ポップス)
- David Bowie, “Blackstar” (アートロック)
- Chance the Rapper, “Coloring Book”(ヒップホップ)
- Car Seat Headrest, “Teens of Denial”(インディー・ロック)
- Frank Ocean, “Blonde”(R&B)
- Radiohead, “A Moon Shaped Pool”(アート・ロック)
- Rolling Stones, “Blue & Lonesome”(ブルース・ロック)
- Kanye West, “The Life of Pablo”(ヒップホップ)
- Leonard Cohen, “You Want It Darker”(フォーク・ロック)
- Young Thug, “Jeffery”(ヒップホップ)
NME’s Albums of The Year 2016
- The 1975, “I Like It When You Sleep For You Are So Beautiful Yet So Unaware Of It” (インディーポップ)
- Kanye West, “The Life Of Pablo”(ヒップホップ)
- Christine and The Queens, “Chaleur Humaine”(シンセ・ポップ)
- Skepta, “Konnichiwa”(ヒップホップ)
- Kaytranada, “99.9%”(ヒップホップ)
- David Bowie, “Blackstar”(アート・ロック)
- Diiv, “Is The Is Are”(インディーロック)
- Iggy Pop, “Post Pop Depression”(アート・ロック)
- Chance The Rapper, “Coloring Book”(ヒップホップ)
- Frank Ocean, “Blonde”(ヒップホップ)
2017年のトップ10アルバム
50 Best Albums of 2017 – Rolling Stone
- Kendrick Lamar “Damn” (ヒップホップ)
- Lorder “Melodrama”(ポップス)
- U2 “Songs of Experience”(オルタナティブ)
- Kesha “Rainbow”(ポップス)
- LCD Soundsystem “American Dream”(ダンスパンク)
- Khalid “American Teen”(R&B)
- Taylor Swift “Reputation”(ポップス)
- Queens of the Stone Age “Villains”(オルタナティブ)
- Migos “Culture”(ヒップホップ)
- 10.Sam Smith “The Thrill of It All”(ポップス)
NME’s Albums of The Year 2017
- Lorde “Melodrama”
- Wolf Alice “Visions Of A Life”
- Kendrick Lamar “DAMN”(ヒップホップ)
- Father John Misty “Pure Comedy”
- LCD Soundssystem “American Dream”(ダンスパンク)
- J Hus “Common Sense”(ヒップホップ)
- SZA “CTRL”(R&B)
- Lane Del Rey “Lust For Life”(ドリームポップ)
- Wiley “Godfather”(ヒップホップ)
- 10.Liam Gallagher “As You Were”(ブリットポップ)
2018年のトップ10アルバム
50 Best Albums of 2018 – Rolling Stone
- Cardi B, “Invasion of Privacy”(ヒップホップ)
- Kacey Musgraves “Golden Hour”(ポップス)
- Camila Cabello “Camila”(ポップス)
- Pistol Annies “Interstate Gospel”(カントリー)
- Ariana Grande “Sweetener”(ポップス)
- Travis Scott “Astroworld”(ヒッポホップ)
- Pusha T “Daytona”(ヒップホップ)
- Lady Gaga and Bradley Cooper “A Star Is Born Soundtrack”(ポップス)
- Kurt Vile “Bottle It In”(インディーロック)
- Drake “Scorpion”(ヒップホップ)
NME’s Albums of The Year 2018
- The 1975 “A Brief Inquiry Into Online Relationships”(ポップス)
- Arctic Monkeys “Tranquility Base Hotel & Casiono”(インディーロック)
- IDLES “Joy As An Act Of Resistance”(パンクロック)
- Sunflower Bean “Twentytwo in Blue”(オルタナティブ)
- Pusha T “Daytona”(ヒップホップ)
- Shame “Songs of Praise”(オルタナティブ)
- Kali Uchis “Isolation”(R&B)
- Cardi B “Invasion of Privacy”(ヒップホップ)
- Mitski “Be the Cowboy”(アートロック)
- Christine and the Queens “Chris”(ポップス)
やはり一般的に言われる通り、全体としてヒップホップ、ポップスがメインストリームの時代だったかなと感じます。2015年、2016年はベック、ローリングストーンズ、デヴィット・ボウイ等のベテラン勢の活躍は目立ちますが、やはり若手ロックアーティストの活躍は目立ちません。多くのロックファンの中でも2010年代はロック不作の年代として定着しているようです。
しかしロックに限らず、2005年以降に新しい音楽のムーブメント、メインストリームが誕生していないと感じるのは私だけでしょうか。2005年以前は、1970年代のハードロックやパンク、1990年代のグランジ、ヒップホップ、2000年代前半のロックリバイバルのようにムーブメントが明確であり、新しい音楽ジャンルも数年単位で誕生していました。2005年以降のムーブメントはヒップホップ、ポップス、インディーロックと言えると思うのですが、どれも新しい音楽ジャンルではありません。音楽は一般的に言われるように1990年代で成熟しきってしまったのでしょうか。。。このまま死にゆくのでしょうか。
しかし1980年代の様子に少し似ているような気がします。ハードロック、パンクの繁栄後、ロックも方向性を見失い、ジャンルが細分化していく中、マドンナ、プリンス、マイケルジャクソンを筆頭とするポップス勢が音楽市場を制しました。ゆえに1980年代は音楽の暗黒時代といって音楽史の中で無視されることおも多いですが、その中でもU2, REM, ジョイ・ディヴィジョン、スミス、ビースティー・ボーイズ、ソニックユース等の音楽に新しい付加価値を加え、音楽史に名を残すアーティストが多数誕生しています。これらのアーティストも当時のリアルタイムではそのジャンル、音楽の新規性が分かりにくかったと思います。そして同時にこれらのアーティストは確実に、90年代のオルタナティブ、グランジ、エレクトロニカ等の音楽ムーブメントの礎を作っています。2010年代もそんな時代なのかもしれません。2020年代はまた音楽豊作の時代になるかもしれません。
ただ同時にインターネット、SNS、音楽のストーリーミングサービス、AIの発展に伴い、今までのような音楽シーンの評価の仕方、音楽の聴き方自体が変わって行くかもしれません。2005年代以降はインターネット、SNSが本格的に個人に普及した時期と重なります。Youtube, Instagram等の誕生で凄く才能がなくても、場所、資金、プロデューサーに恵られなくても共感が得られれば活躍できる平等で、個人の時代になりました。また同時にこれらのサービスは、娯楽が多様化するという視点でみると、音楽自体の競合相手になっています。そして音楽ストーリミングサービスの発展によりレコード、アルバム、音楽を所持すること自体必要がなくなり、また誰が歌っているかもいずれ興味がなくなっていくのではないでしょうか。そしていずれはAIが勝手に自分好みの音楽を選曲してくれて、音楽を選ぶということもしなくなる時代がくるかもしれません。